事業の経営者が亡くなった場合、通常の遺産相続に加えて、事業についても対応しなければいけない場合があります。また一言で事業といっても、個人事業なのか、法人(株式会社や有限会社)なのかによって相続の手続きが異なります。
個人事業の相続
個人事業の場合、事業に関連するすべての個人資産が相続の対象になります。そのため、故人が営んでいた事業について、相続人の誰かが相続して継続するのか、事業をやめるのかなどを検討する必要があります。
個人事業を承継する場合には、個人事業の開業届出書、給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出、所得税の青色申告承認申請書等の、通常の開業に必要な届出を相続人が行います。それぞれの書類ごとに、提出までの期限が決まっているため、迅速な対応が必要です。
反対に、事業を引き継ぐ人がおらず負債も多い場合には、相続放棄を検討する必要があります。相続放棄をする場合は、必要書類を家庭裁判所に提出し、家庭裁判所から送られてくる照会書に回答し、返送すれば手続は完了します。ただし、相続放棄をする場合には、原則として、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に手続きを行う必要があることに注意が必要です。
法人の相続
株式会社や有限会社といったいわゆる法人は、会社の代表者とは別の権利主体とみなされるため、法人が所有する財産については相続の対象とはなりません。また、故人の役職が相続人に自動的に相続される、というわけでもありません。
ただし、多くの経営者は自社の株式や持分を多く保有しています。個人の株式(持分)については相続の対象となりますので、きちんと対応する必要があります。また、経営者が保有する株式(持分)は、会社の経営権に関わるため、株式(持分)の相続が会社の経営権の問題に直結するというのが、法人経営者の相続の特徴です。
相続と事業承継の違い
事業の経営者が亡くなった際によく聞く言葉として、事業承継というものがあります。相続と何が違うのかと思われがちですが、相続では故人の相続人のみを対象に事業に関する権利をどのように継承するか検討されるのに対し、事業承継では、経営者が存命中に相続人ではない相手に事業に関する権利を継承させることなども含まれます。そのため事業承継は経営者が亡くなった際だけではなく、経営者自身での経営が難しくなった、今の事業から撤退して他の事業に参入したい、という場合にも行われます。
近年では、経営者の高齢化と後継者不足から、経営者の生前(すなわち相続が発生する前)に事業承継が行われる場合が増えています。
相続トラブルを防ぐために
経営者の相続においては、通常の遺産分割に加え、事業に関する相続問題が発生するため、相続が発生した際にトラブルになってしまうことも少なくありません。
事業経営に特有の相続トラブルを防ぐためには、下記のような対策が有効です。
遺言書の作成
経営者自身が亡くなる前に準備できることとしては、遺言書の作成です。
事業経営に関わる多くの人や親族などから生前に話を聞き、利害関係なども十分に考慮したうえで遺言書を作成しておけば、多くの人が納得し、スムーズに遺産分割を進めることが可能です。
ただし、遺言書も正しい方法で作成・保管しておかないと効力が認められず、結局争いに発展してしまうという場合もあります。
遺言書を作成する際は、弁護士などの専門家にご相談をいただいたうえで作成することをおすすめします。
遺産分割協議・遺産分割調停
遺言書が作成されていなかった、発見されなかった場合、相続人同士で遺産分割協議(話し合い)の上で遺産相続方法を決定します。しかし当事者同士での話し合いはつい感情的になってしまい、スムーズに進まないことも少なくありません。そのような場合は弁護士を代理人とすることにより、双方が冷静に遺産分割を進めることができます。
また、もし協議で相続人全員の同意が得られなかった場合、遺産分割調停を行うことも可能です。遺産分割調停を行う場合には証拠資料の提出などの法的手続が必要になりますので、弁護士などの専門家にサポートを依頼するとよいでしょう。
事業承継
①や②は、経営者が亡くなった後の権利の承継を想定した手続です。
しかし、経営者が築き上げた事業をスムーズに次代に承継させ、さらに成長させていくには、経営者の生前から最適な承継の方法を検討し、実際に承継させる事業承継の方法をとることも有用です。
当事務所でサポートできること
当事務所では、相続問題についてのご相談をお受けしております。
遺言・生前対策
遺言書の作成や執行についてのサポートを実施しております。遺言書の作成から、遺言執行者まで引き受けておりますので、遺言内容の速やかな執行を実現できます。
遺産分割協議・調停
当事務所では、相続人間で話し合っておられる段階、又は話し合う前段階からご相談していただくことを勧めており、早期の段階でのご助言に力を入れております。交渉段階からご相談をいただくことで、問題の早期解決を目指しております。
事業承継
当事務所では、事業内容や承継に関する希望をお伺いし、必要に応じて公認会計士などの他士業と連携して最適な事業承継の方法をご提案することができます。
不動産相続問題
相続問題で特にトラブルになりやすいのが、不動産に関する相続問題です。しかし当事務所ではなどの専門家と連携した対応で、多様な問題にもワンストップで対応可能です。
経営者の相続・事業承継問題は村松法律事務所までご相談ください
経営者の相続・事業承継問題は、通常の相続に加えて様々な手続が必要になります。また、対象となる金額も大きくなる場合が多く、手続に関与する人も多いため、円滑な処理が難しい場合もあります。
村松法律事務所では、このような相続・事業承継問題についても積極的にご相談をお受けしております。
遺言書の作成、遺産分割、事業承継等まで、経営者のご意向を最大限に尊重したサポートをご提供しております。
初回相談は30分無料でお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。