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公正証書遺言とは?作成手順や具体例について弁護士が解説

公正証書遺言とは

あまり知られていないのですが、遺言書には自筆証書遺言と、公正証書遺言の2種類があります。

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の内容や日付、氏名などをすべて手書きで記したうえで、押印をすることによって効力を持ちます。手書きということで自宅で作成可能であり、費用を抑えられるという点でも魅力に感じる方も多い遺言書の形式です。ただし、遺言書としての要件を満たしていないと有効とは認められない、自宅での保管は改ざんのリスクがあるため別途保管の検討が必要などのデメリットがあります。また、正しく保管されていた遺言書でも、開封時に家庭裁判所での検認手続きを経なければ、後に無効とされるリスクがあります。

これに対して公正証書遺言は。公証役場で、公証人2名の立会いの下で遺言の内容を遺言者が口述し、公証人がその内容を書き留めるという形式にて作成する遺言書になります。作成にやや費用が掛かりますが、完成した遺言書は公証役場にて保管されるため、改ざんなどのおそれがなく、検認手続きは不要です。公証人という専門家のもとで作成されるため、要件を満たしていないという心配もありません。

自分の遺言をきちんと守ってもらいたい場合には、公正証書遺言を作成することがおすすめです。

公正証書遺言作成の手順

公正証書遺言の作成は、大まかに下記の手順にて進めます。

(1)遺言書の案の準備

遺言者本人が、遺言の原案を作る

公証役場で、原案を公証人に伝え、内容を確認し、案を固める

(2)必要書類と証人の準備

公証人の指示した書類を用意し、公証役場へ送る

遺言作成時に立ち会ってもらう証人2名を決める

(3)公証役場での遺言書の作成

作成日時(平日のみ)を予約する

予約日時に、遺言者本人が、2名の証人とともに公証役場に行く

証人の立会のもと、公証人に対し、遺言書の案を口頭で述べる

公証人が作成した遺言書の内容を確認し、間違いがなければ、遺言者、証人、公証人で署名・押印する

原本が公証役場に保管され、正本・謄本が遺言者に渡される

公証人の手数料を支払う

公正証書遺言作成のための必要書類(主なもの)

共通 遺言者の実印
遺言者の印鑑登録証明書(遺言作成日から3ヶ月以内の発行)
遺言者と相続人の続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本
証人を自分で用意する場合 証人となる人の氏名、住所、生年月日、職業が分かるメモ
証人の認印
親族以外の人に遺す場合 住民票や郵便物等、その人の住所が分かるもの
会社等の法人に遺す場合 法人の登記事項証明書または代表者事項証明書(登記簿謄本)
不動産を遺す場合 登記事項証明書(登記簿謄本)
固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税明細書
預貯金等を遺す場合 通帳(含むコピー)等、口座と残高が確認できるもの

※主に必要な書類であり、財産の内容や、状況によって異なります

遺言書作成のための具体的な作成作業

遺言書の案の準備

遺言者本人が、誰にどの財産を引き継がせるか、遺言書の原案を作成します。

公証役場に出向き、本人の考えた内容が正確に反映される文言となるよう、公証人と相談します。公証人が、本人に詳細の聴き取りをすることもあります。

必要書類の準備

財産を遺す相手や、遺す財産の内容が具体的に分かる書類を用意し、公証役場に提出する必要があります。

証人の準備

遺言者が真意から遺言を作成したこと、手続が適正になされたことを確かめるために、証人2名が立会うよう定められています。本人が手配できますが、相続人等は証人になれません。証人になれない者が立ち会うと遺言が無効になるため、注意が必要です。

遺言者本人が手配する場合

未成年者のほか、推定相続人(子や妻、両親や兄弟など、相続人となりうる親族)やその配偶者は、証人になれません。また、親族でない者に財産を残す場合は、その者やその者の配偶者も、証人にはなれません。

相続について少しでも利害関係のある人は、証人になれないと考えた方が無難です。

公証役場で手配する場合

本人で証人を手配するのが難しい場合や、身の回りの人に遺言書を作成していること自体を知られたくない場合には、公証役場に証人の手配を頼むこともできます。証人には守秘義務がある点でも安心です。ただし、一定の手数料が必要です。

作成日の調整

遺言書の案が整い次第、公証役場との間で、実際に公正証書遺言を作る日を決めます。平日に限られること、公証人は遺言以外の業務もとても多いことから、かなり先の日程になる場合があります。

公正証書遺言の作成

作成日に、遺言者本人と、証人2名(本人が手配した場合)で、公証役場に出向きます。

遺言書本人から、公証人に対して、証人の立会いの下、用意した遺言書案の内容を口頭で告げます。このとき、家族など利害関係者の目を気にしなくても良いように、家族などは退席します。

公証人は、本人に十分な判断能力があり、真意に基づいた遺言であることを確認し、公正証書遺言の原本を作成します。公証人は作成した原本を読み聞かせるので、本人と証人はその内容に間違いがないことを確認し、署名・押印します。その上で、公証人が署名・職印を押すことで、完成します。

通常は、原本、正本、謄本が各1部作成されます。原本は公証役場で保管され、正本と謄本は遺言者に渡されます。

会話でのやりとりが難しい場合の対応

口がきけない方でも、十分な判断能力があり、筆談や通訳人を介して公証人と意思疎通ができれば、作成することができます。

また耳の聞こえない場合には、書面を目で見たり、通訳人を介したりすることで、原本の内容の確認を行います。

公証役場に出向くのが難しい場合の対応

遺言者本人が病気等により公証役場に出向くことが難しい場合は、自宅や入院先、老人ホーム等に公証人が出向いて、作成することができます。ただし、追加の手数料や日当、交通費など、追加の費用がかかります。

公正証書遺言作成にかかる手数料

公正証書遺言を作るには、公証人へ手数料を支払う必要があります。

手数料の支払いは現金のみで、遺言書に記載されている財産の価額に応じて、下の表のように定められています。財産の総額ではなく、相続人や受遺者(親族以外の者)ごとに、受け継ぐ財産の価額に応じてかかるため、注意が必要です。

価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円超え200万円以下 7000円
200万円超え500万円以下 1万1000円
500万円超え1000万円以下 1万7000円
1000万円超え3000万円以下 2万3000円
3000万円超え5000万円以下 2万9000円
5000万円超え1億円以下 4万3000円
1億円超え2億円以下 4万3000円+5000万円を超すごとに1万3000円を加算
3億円超え10億円以下 9万5000円+5000万円を超すごとに1万1000円を加算
10億円超え 24万9000円+5000万円を超すごとに8000円を加算
(遺言加算) 財産全体の総額が1億円以下の場合、1万1000円を加算

その他手数料(主なもの)

公正証書遺言の謄本の交付の手数料 枚数1枚につき250円
公正証書遺言の原本の枚数が4枚(横書きは3枚)超過時の加算 超過1枚につき250円
公証人が、病床の本人の下に出向いて作成した場合 表1の総額に50%加算
公証人が、自宅や老人ホーム等に出向いて作成した場合 日当及び交通費
証人を公証役場に紹介してもらった際の日当 1人5000〜1万5000円

 

例1:妻に4000万円、子に6000万円

財産額 手数料
4000万円 2万9000円
5500万円 4万3000円
遺言加算 (総額1億円以下のため) 1万1000円
合計 8万3000円

その他、書面の枚数に応じた費用等が加わります

例2:子Aに9000万円、子Bに1億6千万、証人2人依頼、自宅で作成

財産額 手数料
子A 8000万円 4万3000円
子B 1億6000万円 6万9000円
証人2名依頼費用 1万〜3万程度
合計 12万2000〜14万2000円程度

その他、公証人・証人の日当・交通費、書面の費用等が加わります

手続きに不安のある方は弁護士にご相談ください

公証人は、相続の「問い」「悩み」には応えてくれない

公証人の多くは、元裁判官や元検察官で、法律の専門家です。「自宅は妻ひとりのものにする」「A銀行の預金はまるまる長男に遺す」といったご本人の選択が、正確に反映される遺言書を作成します。

しかし、公証人はいわば、本人が既にした「選択」を確実にする仕事です。どのような相続をすればいいのか、という相談には応じていません。「妻が安心して自宅に住み続けられるようにしたい」「息子に不動産のほか預金も遺したいが、相続税が心配だ」といった、「選択」自体への「問い」や「悩み」には対応していません。

弁護士なら、相続の「問い」「悩み」に応えます

弁護士は、このような「問い」や「悩み」を正面から受け止め、相続にまつわる「選択」をサポートします。

 

−不動産はすべて子に遺したいが、妻が生涯自宅に住み続けられるようにしたい

−子どもたちに争ってほしくはないが、土地をバラバラに分けるのも避けたい

等々

 

遺言は、このような悩みを解決するための道具です。弁護士であれば、相続の在り方から遺言の文言の検討まで、一貫してサポートできます。

作成にあたっては、本人の希望の実現とトラブルの予防を両立できるよう、文言だけではなく具体的な相続の在り方のプランニングも行います。前提となる相続財産や相続人の範囲の調査といった作業も、弁護士が本人に代わって行います。

作成後も、家族関係や財産関係に変動が生じたときなど、遺言の修正が求められる場面では、従来の経緯をふまえたアップデートができます。

また、将来遺言を執行するその時も、作成に携わった弁護士が遺言執行人となることで、相続人の手間を減らすとともに、トラブルを未然に防ぐことができます。

 

村松法律事務所では、税理士とも連携し、相続税対策も踏まえた解決が可能です。

公正証書遺言の作成をご検討の際はぜひ、弁護士にご相談ください。