- 2024.12.03
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遺言の種類と選び方とは?3種類の遺言とおすすめの公正証書遺言について解説
Contents遺言書の種類
一般に利用できる遺言書には【自筆証書遺言】【公正証書遺言】【秘密証書遺言】の三つの形式があります。 【自筆証書遺言】は、用意の手間や費用が最も少ない形式です。その一方で、遺言書が法律上無効とされたり、遺言書そのものを紛失したりするリスクがあります。 これに対し【公正証書遺言】は、準備にこそ手間や費用がかかりますが、トラブルの予防に役立ち、安心な相続を実現できる形式といえます。自筆証書遺言
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、本人が自筆で①遺言の全文、②日付、③氏名を書き、④捺印したものです。本人以外が代筆することはできません。部分的な訂正も、厳格な形式に従う必要があります。 財産の目録だけは、パソコンで作成したり、通帳等資料のコピーを添えたりすることは可能ですが、すべてに自筆での署名や捺印が必要です。 本人の死後、封印のあるなしに関わらず、家庭裁判所で「検認」の手続が必要です。「検認」とは遺言書の偽造などを防ぐために、相続人らの立ち会いのもと、家庭裁判所で開封し、内容を確認する手続です。自筆証書遺言のメリット
本人だけで作成でき、証人も不要
費用がかからない
自筆証書遺言のデメリット
形式や内容の不備で、無効とされるリスクが比較的大きい
ごく一部の訂正でも、形式をみたさず、無効となるおそれ 内容の法律上の意味が不明確な場合、無効となるおそれ自筆でないと作成できない
老いや病気で字が書けなくなると、作成できない遺言書の管理上のリスク
自ら管理する場合、他の者が見つけ、改ざんや破棄をするおそれ 紛失したり、死後、遺言書の存在に気付かれないおそれ家庭裁判所で「検認」の手続が必要
管理上のリスクがあることから、手続が厳格になっています (法務局での保管制度を利用保した場合は不要です)自筆証書遺言をめぐるトラブル
日付の記載が原因で、遺言書が無効となったケース
日付を「昭和四拾壱年七月吉日」と記載したため、遺言書が形式面で無効に(最判昭和52年11月21日)妻が記入を補助したことをめぐり、親族間で争いになったケース
夫に視力の衰えや手の震えがあり、妻が筆記を手伝った。妻が遺言書の内容に介入したのではないかと、親族間で十年以上続く争いに(最判昭和62年10月8日)自筆証書遺言を検討の際は、弁護士に相談を
自筆証書遺言の場合、遺言書それ自体が、かえって相続トラブルの争点となってしまったケースも多くみられます。 自筆証書遺言でも、手数料を支払えば法務局で遺言書を保管できます。死後に相続人への通知サービスがあるほか、家庭裁判所での「検認」も不要です。ただし、遺言書を作るにあたって形式面や内容面の相談やアドバイスは受けられないため、遺言書が無効となるリスクは残ります。 安心できる相続のため、自筆証書遺言を検討されているのであれば、ぜひ専門家である弁護士にご相談ください。秘密証書遺言
秘密証書遺言とは
かいつまんで言えば、「遺言書がある」という事実のみを公的に裏付ける方法です。費用や手間がかかる割には、相続トラブルを予防する効果はあまりなく、使いづらいとされています。 まず、本人が遺言書を作成し、封印した上で遺言書と同じ印で捺印します。次に公証役場に出向き、2人以上の証人と、公証人の立ち会いの下、遺言書を作成したことを申し述べます。述べられた事実を公証人が記録し、本人や証人とともに署名、捺印することで、完成します。秘密証書遺言のメリット
本人の署名と捺印があれば、本文は代筆やパソコン等でも作成可能
遺言書の内容を、他人に知られずに済む
本人の死後、証人を通じて、遺言書の存在を伝えることができる
秘密証書遺言のデメリット
形式や内容の不備で、無効とされるおそれが比較的大きい
遺言書は封印されるため、公証人は中身を確認できません悪用されるリスク
本文を代筆やパソコンで作成可能なため、本人の判断能力が低下した際に、意図せぬ遺言書を作成させられるおそれがある遺言書の管理上のリスク
自筆証書遺言と同じく、紛失や改ざん等のおそれがある 自筆証書遺言と違って、法務局で保管することはできない必ず家庭裁判所で「検認」の手続が必要
公証役場で手続をするにも関わらず、自筆証書遺言との差はほとんどありません秘密証書遺言をめぐるトラブル
他の者が本文をワープロで作成し、判断能力の落ちた本人の秘密証書遺言として作られたケース
後妻の子の妻が、すべての財産を後妻に相続させるという、前妻の子に不利な本文をワープロで用意。本人は病気で判断能力が落ちていたこともあり、公証人の前で自分が筆者であると述べ、本人の秘密証書遺言として作成されてしまう。最終的に遺言書は無効と判断されたが、前妻の子と後妻で最高裁まで争った。(最判平成14年9月24日)より安心な公正証書遺言の利用を
秘密証書遺言は、手間がかかる割にトラブルの予防効果は限られています。それもあってか、2023年の1年間で、公正証書遺言は全国で11万8981件も利用されているのに対し、秘密証書遺言は86件のみです(日本公証人連合会まとめ)。 安心な相続を実現するためにも、公正証書遺言をお勧めします。公正証書遺言
公正証書遺言とは
公証人が本人の遺言を聞き取り、遺言書を作成します。法律の専門家である公証人が作成に関わるため、形式や内容の不備によって無効とされるリスクが抑えられるのが特徴です。また、遺言書が公証役場で保管されるため、紛失など管理上の危険もほとんどありません。 本人が公証役場に出向き、口頭で遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを記録します。2人以上の証人が立ち会い、本人とともに、記録した内容が正確かどうかを確認した上で、署名、捺印します。 作成された遺言書の原本は、公証役場で保管されます。公正証書遺言のメリット
公証役場で保管するため、紛失や破棄、改ざんのおそれがない
家庭裁判所での「検認」手続が不要
公証人が作るため、無効になるリスクが低い
公証人の大半は、経験豊富な裁判官、検察官の出身です遺言書の内容を秘密にしやすい
公証人や証人には、守秘義務が課せられています 公証役場に、証人を紹介を頼むことも可能です死後、遺言書を見つけやすい
本人の死後、50年間保管されます 相続人などの利害関係者は、最寄りの公証役場で、公正証書遺言の有無や、どこに保管されているかを照会できます 相続人らは、謄本を郵送で取り寄せることができ、便利ですこんな場合にも対応
老いや病気で字が書けない
口述により作成できるほか、公証人による署名の代筆も可能老いや病気で口述ができない
筆談や通訳も利用でき、言語能力が低下していても作成可能です本人が病院に入院、又は介護施設等に入所している
公証人や証人は出張にも対応し、入院先等でも作成できます公正証書遺言のデメリット
手間や時間、公証人の手数料がかかる
公証役場で作成できるのは平日のみです 相続財産の多さや遺言の内容によっては、口述後、完成までに一ヶ月以上かかることもあります 相続人の数や、相続財産の額などにより、手数料が異なります口述にあたって入念な準備が必要
公証人は、全国に約500人、札幌でも8人(2024年9月現在)しかいません。遺言書だけでなく、商取引や特許関連など幅広い手続を担っています。そのため遺言書の作成も、事前に日時を決めて臨むこととなります。 遺言をスムーズに口述するには、予め内容を整理しておくのはもちろん、不動産なら登記書類、預金なら通帳の写しなど、資料や目録の準備が欠かせません。会社の経営が関わるような場合はなおさらです。遺言書を作成するなら公正証書遺言がおすすめです
このように、自筆証書遺言と秘密証書遺言はいずれも、遺言書そのものの不備から法律上無効とされるおそれや、紛失や改ざんなどの管理上のリスクがあります。 公正証書遺言を利用することで、これらのリスクを回避できます。また、死後に相続人が手続をする上でも便利です。 一方で、作成にあたっては、慣れない公証役場で、初対面の公証人を前に、遺言を述べることとなります。公証人のアドバイスがあるとは言え、資料をもれなく揃えるのはもちろん、遺言の内容についても入念な検討が必要です。こうした準備には、法律の専門家である弁護士が大きな助けとなります。 安心できる相続のため、公正証書遺言を検討されているのであれば、ぜひ専門家である弁護士にご相談ください。 村松法律事務所の無料相談>>>
- 2024.10.21
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相続手続きを始めるにあたって
Contents相続手続きを始めるにあたって
相続とは、故人の財産関係のすべてを、残された者へと引き継ぐ手続きです。 誰が、何を、どのように引き継ぐのか決まれば、残された者は遺産を有効に活用できます。しかし、財産の種類や分け方によっては、複雑な手続きが伴います。また、相続放棄をするかどうかや、相続税の申告・納付のように、期限の定められた手続きもあります。葬儀や法事も続く中、次々に作業をこなしていく必要があり、十分な知識と準備が不可欠です。 特に、手続きをスムーズに進めるためには、必要書類の準備が大切です。相続とは
(1)相続とは、故人の財産関係を引き継ぐ手続き
人は法律上、自らの意思に基づいて、財産を所有する権利をもったり、お金を返す義務を負う(借金をする)資格があります。しかし、この資格が認められているのは、人が生きている間だけです。 では、誰かが亡くなったとき、その人の権利や義務はどうなるのでしょうか。親がなくなった途端、実家の建物が誰のものでもなくなる、ということはありません。 亡くなったその時から、誰が、何を、どのように引き継ぐのかを決める、それが相続手続きの果たす役割です。 なお、故人が遺言書を残していれば、原則としてその通りに引き継がれます。遺言書がなければ、法律の規定や、残された者の話し合いで決めることになります。遺言とは、本人が望む引き継ぎ方を、あらかじめ決めておくための道具なのです。(2)「誰」が引き継ぐのか
遺言書があれば、その記載に従います(*遺留分を除く)。遺言書がなければ、法律の規定によって相続人が決まります。 このため、会ったこともない誰かと、遺産を分け合うことになるケースもあります。手続きを進めようにも、連絡先さえ分からない、ということも起きます。(3)「何」を引き継ぐのか
権利も義務も、故人の財産関係のすべてが引き継ぎの対象となります。不動産や株式、現金や預金といったプラスの財産だけでなく、借金のようなマイナスの財産も、引き継ぐことになります。 そのためには、故人がどんな財産を、どこに、どれだけ持っていたのか、すべて把握する必要があります。同じく、どのような義務を負っていたのかも、確かめなければなりません。(4)「どのように」引き継ぐのか
そして、どのように引き継ぐのかを具体的に決めなければなりません。 遺言書があれば、原則として遺言書の記載に従いますが、遺留分を踏まえた調整が必要なこともあります。 遺言書がなければ、相続人どうしで分け方を決めることになります(遺産分割協議)。特に不仲でなくとも、いざ生活や事業に関わってくるとなると、決めるのは容易ではありません。2. 相続手続きに必要な書類
(1)全体に関わるもの
①遺言書
相続手続きは、遺言書の内容に従います。遺言書が公正証書遺言である場合は、その原本が必要です。②検認調書(又は検認済証明書)
遺言書が家庭裁判所で検認手続を経たことを示します。公正証書遺言や、自筆証書遺言でも法務局の保管制度を利用した場合は不要です。(2)人に関わるもの
①被相続人の出生から死亡に至る戸籍謄本
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要です。これにより、誰が相続人となるかを確認します。②被相続人の住民票の除票
被相続人が亡くなった時点での住所地を示すものです。③相続人全員の現在の戸籍謄本
相続人の生存と被相続人との続柄を確認します。④相続人全員の本人確認書類
相続人全員のマイナンバーカード又は通知カード
相続人全員の現住所や本人確認とともに、一部手続で必要なマイナンバーの確認にも使えます。相続人の運転免許証等
現住所や本人確認に使用します。相続人全員の住民票(マイナンバー記載のもの)
カードがない場合のマイナンバーの確認用。⑤相続関係説明図
被相続人とすべての相続人の関係を示す相関図で、相続人が作ります。手続によっては、戸籍謄本に添えて提出することで、後で戸籍謄本を返却してもらうことができます。請求の手間を減らすことができます。⑥法定相続情報一覧図の写し
①〜③と⑤を法務局に提出すると、法定相続情報一覧図を作成できます。手続で戸籍謄本の代わりに使えるため、戸籍謄本の請求が1セットで済み、手間や費用が抑えられます。(3)財産に関わるもの
銀行預金の場合
口座残高証明書
亡くなった日を基準日に、故人の預金残高を確認します。不動産の場合
名寄帳
各市区町村が、不動産を所有者ごとにまとめたものです。故人が所有する不動産の一覧となりますが、その市区町村内にあるものしかわかりません。固定資産評価証明書
故人の所有していた不動産の評価額を示します。 これらは、主に相続手続きの初期段階に必要な書類です。財産の種類や相続人の状況によっては、より多くの書類が必要となります。3. 必要書類の入手方法
(1)全体に関わるもの
遺言書
保管先や保管方法により異なります。公正証書遺言であれば公証役場で、自筆証書遺言の保管制度を利用していたのであれば法務局で取得できます。検認調書(又は検認済証明書)
遺言書の検認手続の後、家庭裁判所で交付を申請できます。(2)人に関わるもの
被相続人の戸籍謄本
本籍地の市区町村役場で申請します。故人の出生、結婚等、本籍地が移った先ごとに必要です。手数料を支払えば郵送での請求も可能です。 多くの手続に用いるため、複数部必要となります。法定相続情報一覧図を作成すれば、その写しが代わりとなるため、1セットの請求で足ります。被相続人の住民票・除票
被相続人の直近の住所地の市区町村役場で申請します。法定相続情報一覧図の写し
作成を申請した法務局で交付を受けられます。申請は、被相続人の死亡時の本籍地または最後の住所地、申請する相続人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地の、いずれかの法務局で可能です。(3)財産に関わるもの
口座残高証明書
銀行の窓口等で申請します。銀行指定の書式のほか、故人と相続人の戸籍謄本(法定相続情報一覧図で代替可)が必要です。相続人全員の同意書や印鑑証明書が必要な場合もあります。名寄帳、固定資産評価証明書
不動産のある市区町村の役場で、税務課に申請します。この証明書は、相続税の申告にも使用されます。 これらの請求には、身分確認が伴うほか、交付には時間や費用もかかります。複数部必要となる書類や、他の書類が揃ってからでないと請求できないものもあります。二度手間や請求漏れを防ぐためにも、早めの準備が大切です。4. 相続についてお困りの方は弁護士にご相談ください
書類の用意ひとつとっても、相続手続きには多くの時間と労力がかかります。 特に、遺産分割協議が難航する場合や、遺言書の内容に不備がある場合には、より複雑になります。相続税の申告や納税について、問題が生じることも少なくありません。 こうした問題に適切に対処するには、専門家の助言が不可欠です。弁護士は、相続に関する法律の専門知識を有しており、手続き全般をサポートできます。相続人どうしでは気持ちがぶつかる時も、弁護士が間に立つことで、解決につなげやすくなります。また遺言書の有効性の確認、相続税の対策など、さまざまな面でアドバイスを提供できます。 相続手続きを円滑に進めるためには、早めに弁護士に相談することが重要です。相続放棄をするには、相続開始、つまり故人が亡くなってから3ヶ月以内の手続が必要です。相続税も、10か月以内の申告・納付が求められており、迅速な対応が鍵となります。 弁護士に相談することで、法的リスクを軽減しつつ、スムーズに相続手続きを進めることができます。
- 2024.10.21
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公正証書遺言とは?作成手順や具体例について弁護士が解説
Contents公正証書遺言とは
あまり知られていないのですが、遺言書には自筆証書遺言と、公正証書遺言の2種類があります。 自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の内容や日付、氏名などをすべて手書きで記したうえで、押印をすることによって効力を持ちます。手書きということで自宅で作成可能であり、費用を抑えられるという点でも魅力に感じる方も多い遺言書の形式です。ただし、遺言書としての要件を満たしていないと有効とは認められない、自宅での保管は改ざんのリスクがあるため別途保管の検討が必要などのデメリットがあります。また、正しく保管されていた遺言書でも、開封時に家庭裁判所での検認手続きを経なければ、後に無効とされるリスクがあります。 これに対して公正証書遺言は。公証役場で、公証人2名の立会いの下で遺言の内容を遺言者が口述し、公証人がその内容を書き留めるという形式にて作成する遺言書になります。作成にやや費用が掛かりますが、完成した遺言書は公証役場にて保管されるため、改ざんなどのおそれがなく、検認手続きは不要です。公証人という専門家のもとで作成されるため、要件を満たしていないという心配もありません。 自分の遺言をきちんと守ってもらいたい場合には、公正証書遺言を作成することがおすすめです。公正証書遺言作成の手順
公正証書遺言の作成は、大まかに下記の手順にて進めます。(1)遺言書の案の準備
遺言者本人が、遺言の原案を作る 公証役場で、原案を公証人に伝え、内容を確認し、案を固める(2)必要書類と証人の準備
公証人の指示した書類を用意し、公証役場へ送る 遺言作成時に立ち会ってもらう証人2名を決める(3)公証役場での遺言書の作成
作成日時(平日のみ)を予約する 予約日時に、遺言者本人が、2名の証人とともに公証役場に行く 証人の立会のもと、公証人に対し、遺言書の案を口頭で述べる 公証人が作成した遺言書の内容を確認し、間違いがなければ、遺言者、証人、公証人で署名・押印する 原本が公証役場に保管され、正本・謄本が遺言者に渡される 公証人の手数料を支払う公正証書遺言作成のための必要書類(主なもの)
共通 遺言者の実印 遺言者の印鑑登録証明書(遺言作成日から3ヶ月以内の発行) 遺言者と相続人の続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本 証人を自分で用意する場合 証人となる人の氏名、住所、生年月日、職業が分かるメモ 証人の認印 親族以外の人に遺す場合 住民票や郵便物等、その人の住所が分かるもの 会社等の法人に遺す場合 法人の登記事項証明書または代表者事項証明書(登記簿謄本) 不動産を遺す場合 登記事項証明書(登記簿謄本) 固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税明細書 預貯金等を遺す場合 通帳(含むコピー)等、口座と残高が確認できるもの 遺言書作成のための具体的な作成作業
遺言書の案の準備
遺言者本人が、誰にどの財産を引き継がせるか、遺言書の原案を作成します。 公証役場に出向き、本人の考えた内容が正確に反映される文言となるよう、公証人と相談します。公証人が、本人に詳細の聴き取りをすることもあります。必要書類の準備
財産を遺す相手や、遺す財産の内容が具体的に分かる書類を用意し、公証役場に提出する必要があります。証人の準備
遺言者が真意から遺言を作成したこと、手続が適正になされたことを確かめるために、証人2名が立会うよう定められています。本人が手配できますが、相続人等は証人になれません。証人になれない者が立ち会うと遺言が無効になるため、注意が必要です。遺言者本人が手配する場合
未成年者のほか、推定相続人(子や妻、両親や兄弟など、相続人となりうる親族)やその配偶者は、証人になれません。また、親族でない者に財産を残す場合は、その者やその者の配偶者も、証人にはなれません。 相続について少しでも利害関係のある人は、証人になれないと考えた方が無難です。公証役場で手配する場合
本人で証人を手配するのが難しい場合や、身の回りの人に遺言書を作成していること自体を知られたくない場合には、公証役場に証人の手配を頼むこともできます。証人には守秘義務がある点でも安心です。ただし、一定の手数料が必要です。作成日の調整
遺言書の案が整い次第、公証役場との間で、実際に公正証書遺言を作る日を決めます。平日に限られること、公証人は遺言以外の業務もとても多いことから、かなり先の日程になる場合があります。公正証書遺言の作成
作成日に、遺言者本人と、証人2名(本人が手配した場合)で、公証役場に出向きます。 遺言書本人から、公証人に対して、証人の立会いの下、用意した遺言書案の内容を口頭で告げます。このとき、家族など利害関係者の目を気にしなくても良いように、家族などは退席します。 公証人は、本人に十分な判断能力があり、真意に基づいた遺言であることを確認し、公正証書遺言の原本を作成します。公証人は作成した原本を読み聞かせるので、本人と証人はその内容に間違いがないことを確認し、署名・押印します。その上で、公証人が署名・職印を押すことで、完成します。 通常は、原本、正本、謄本が各1部作成されます。原本は公証役場で保管され、正本と謄本は遺言者に渡されます。会話でのやりとりが難しい場合の対応
口がきけない方でも、十分な判断能力があり、筆談や通訳人を介して公証人と意思疎通ができれば、作成することができます。 また耳の聞こえない場合には、書面を目で見たり、通訳人を介したりすることで、原本の内容の確認を行います。公証役場に出向くのが難しい場合の対応
遺言者本人が病気等により公証役場に出向くことが難しい場合は、自宅や入院先、老人ホーム等に公証人が出向いて、作成することができます。ただし、追加の手数料や日当、交通費など、追加の費用がかかります。公正証書遺言作成にかかる手数料
公正証書遺言を作るには、公証人へ手数料を支払う必要があります。 手数料の支払いは現金のみで、遺言書に記載されている財産の価額に応じて、下の表のように定められています。財産の総額ではなく、相続人や受遺者(親族以外の者)ごとに、受け継ぐ財産の価額に応じてかかるため、注意が必要です。価額 手数料 100万円以下 5000円 100万円超え200万円以下 7000円 200万円超え500万円以下 1万1000円 500万円超え1000万円以下 1万7000円 1000万円超え3000万円以下 2万3000円 3000万円超え5000万円以下 2万9000円 5000万円超え1億円以下 4万3000円 1億円超え2億円以下 4万3000円+5000万円を超すごとに1万3000円を加算 3億円超え10億円以下 9万5000円+5000万円を超すごとに1万1000円を加算 10億円超え 24万9000円+5000万円を超すごとに8000円を加算 (遺言加算) 財産全体の総額が1億円以下の場合、1万1000円を加算 その他手数料(主なもの)
公正証書遺言の謄本の交付の手数料 枚数1枚につき250円 公正証書遺言の原本の枚数が4枚(横書きは3枚)超過時の加算 超過1枚につき250円 公証人が、病床の本人の下に出向いて作成した場合 表1の総額に50%加算 公証人が、自宅や老人ホーム等に出向いて作成した場合 日当及び交通費 証人を公証役場に紹介してもらった際の日当 1人5000〜1万5000円 例1:妻に4000万円、子に6000万円
財産額 手数料 妻 4000万円 2万9000円 子 5500万円 4万3000円 遺言加算 (総額1億円以下のため) 1万1000円 合計 8万3000円 例2:子Aに9000万円、子Bに1億6千万、証人2人依頼、自宅で作成
財産額 手数料 子A 8000万円 4万3000円 子B 1億6000万円 6万9000円 証人2名依頼費用 1万〜3万程度 合計 12万2000〜14万2000円程度 手続きに不安のある方は弁護士にご相談ください
公証人は、相続の「問い」「悩み」には応えてくれない
公証人の多くは、元裁判官や元検察官で、法律の専門家です。「自宅は妻ひとりのものにする」「A銀行の預金はまるまる長男に遺す」といったご本人の選択が、正確に反映される遺言書を作成します。 しかし、公証人はいわば、本人が既にした「選択」を確実にする仕事です。どのような相続をすればいいのか、という相談には応じていません。「妻が安心して自宅に住み続けられるようにしたい」「息子に不動産のほか預金も遺したいが、相続税が心配だ」といった、「選択」自体への「問い」や「悩み」には対応していません。弁護士なら、相続の「問い」「悩み」に応えます
弁護士は、このような「問い」や「悩み」を正面から受け止め、相続にまつわる「選択」をサポートします。 −不動産はすべて子に遺したいが、妻が生涯自宅に住み続けられるようにしたい −子どもたちに争ってほしくはないが、土地をバラバラに分けるのも避けたい 等々 遺言は、このような悩みを解決するための道具です。弁護士であれば、相続の在り方から遺言の文言の検討まで、一貫してサポートできます。 作成にあたっては、本人の希望の実現とトラブルの予防を両立できるよう、文言だけではなく具体的な相続の在り方のプランニングも行います。前提となる相続財産や相続人の範囲の調査といった作業も、弁護士が本人に代わって行います。 作成後も、家族関係や財産関係に変動が生じたときなど、遺言の修正が求められる場面では、従来の経緯をふまえたアップデートができます。 また、将来遺言を執行するその時も、作成に携わった弁護士が遺言執行人となることで、相続人の手間を減らすとともに、トラブルを未然に防ぐことができます。 村松法律事務所では、税理士とも連携し、相続税対策も踏まえた解決が可能です。 公正証書遺言の作成をご検討の際はぜひ、弁護士にご相談ください。
- 2024.10.11
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遺産分割手続きの流れとは?ケースごとに手続きの進め方について弁護士が解説
Contents遺産分割とは
遺産分割とは、被相続人すなわち故人の遺産である個々の財産を、具体的に分ける手続きのことを言います。遺産には金銭的な価値だけでなく思い入れも伴うため、相続人どうしで意見の対立が起きやすく、しばしばトラブルに発展します。遺言書の有無で、遺産分割の進め方は大きく変わります
遺言書の有無により、遺産分割協議をするかどうかや、どの財産について協議するかが大きく異なります。まずは故人の遺品を探すなどして、遺言書の有無を確認しましょう。 遺言書が見つかった場合、それが自筆証書遺言や秘密証書遺言であれば、家庭裁判所で遺言書の検認手続を受ける必要があります。検認手続きは、遺言書の偽造等の不正を防ぐ重要な手続きです。 公正証書遺言の正本や謄本が見つかったのであれば、検認手続きは不要です。原本は公証役場に保管されているため、近くの公証役場に出向いて問い合わせましょう。 故人が公正証書遺言を作成しても、亡くなった際に相続人への通知はありません。公証役場にデータベースがありますので、念のため近くの公証役場に出向き、公正証書遺言があるかどうか検索を依頼すると良いでしょう。 自筆証書遺言であっても、法務局の保管制度を利用していた場合は、検認手続きは不要です。この場合も、必ずしも相続人に通知があるわけではないので、近くの法務局に出向いて保管の有無を確かめると良いでしょう。遺言書がある場合
遺言書がある場合は、原則として、遺言書に記された通りに遺産を分割します。ただし、相続人全員が合意することで、遺言書と異なる分割が可能な場合があります。 遺言書で遺言執行者が指定されていたときは、その者が不動産登記や預金の登記名義の変更など具体的な手続きを行います。 遺言執行者の指定がない場合は、相続人と受遺者(相続人以外で、遺言による遺贈を受ける人や法人)の全員が、具体的な手続きをすることになります。 ただし、遺言書が法的に無効とされると、遺言書はないものとして扱われます。遺言書が無効とされる例
・民法の定める方式に従わずに作成された場合 (自筆証書遺言で、日付や署名・押印等がない場合など) ・作成時に、本人がすでに判断能力を失っていた場合 ・内容が具体性を欠いたり、公序良俗に反したりする場合 ・より後に作成された遺言書と、内容が抵触する場合遺言書がない場合
遺言書がなければ、法律上、故人の遺産はいったん相続人全員の共有となります。その上で、遺産分割協議によって最終的な分け方を決めることになります。 すべての相続人が合意に至れば、相続人全員で署名・捺印した遺産分割協議書を作成します。相続登記など具体的な手続きを進めるには、この遺産分割協議書が必要です。 相続人どうしで合意できないときは、裁判官や調停委員を交えた遺産分割調停に進みます。調停も成立しないときは、裁判官が遺産分割審判で分け方を決めます。遺言書がない場合の遺産分割手続きの流れ
遺言書がない場合は、法律によって定められる相続人の全員で、遺産分割協議をします。 「誰に」「何を」分けるかの話し合いであるため、まずは相続人及び相続財産(遺産)を確定する必要があります。相続人及び相続財産調査
相続人の確定
遺産分割協議では、すべての相続人が合意する必要があります。相続人の確定は、そもそも誰と話し合うべきかを左右するため、重要です。 法律上、誰が相続人となるかは、子や配偶者の有無、両親が健在かどうかといった事情によって左右されます。 疎遠であったり、他の家族が認識していない人物が、突然相続人に加わる場合もあります。 後になって新たな相続人が見つかった場合、一度作成した遺産分割協議書は無効になるため、注意が必要です。 具体的には、被相続人の出生から死亡に至る戸籍謄本を集めて相続人となり得る者を洗い出し、連絡を取るなどの作業が必要です。相続財産の確定
相続財産の確定は、遺産分割協議だけでなく、相続放棄の判断や相続税の申告にも関わる、重要な事柄です。 遺産のすべてが相続の対象となるため、プラス・マイナスを問わず洗い出す必要があります。分け方を話し合う上でも、全体の額だけでなく、個々の財産の額についても把握しなければなりません。 具体的には、故人の口座や遺された書類等から財産をとりまとめます。預金等であれば残高証明、不動産であれば固定資産税の課税通知に記された評価などを頼りに、額を把握します。貴金属や美術品等であれば、鑑定が必要になることもあります。負債についても、合わせて調べます。 遺産分割協議の成立後に新たな財産が見つかった場合、その財産について改めて遺産分割協議をすることになります。そればかりか、見つかったのが土地や建物など分けにくい財産であれば、相続財産全体で調整するほかなく、一から遺産分割協議をやり直すことになりかねません。また、負債が見つかり相続財産がマイナスになる場合でも、相続放棄ができない恐れがあります。 相続財産は、相続税の額にも関わります。相続税申告後に財産が見つかった場合、過少申告や延滞を理由に追加で税金を課せられるおそれがあります。 相続放棄の判断は被相続人が亡くなったのを知った日から3ヶ月以内、相続税の申告は亡くなったのを知った翌日から10ヶ月以内が期限であり、相続財産の確定は早急にする必要があります。遺産分割協議
遺言書がない場合は、遺産分割協議をします。遺言書が見つからないときや、無効とされたときも同様です。遺言書に記されていない財産は、遺言書がない場合と同様に扱われます。 遺産分割協議には、すべての相続人が参加し、遺産分割の方法や内容を話し合います。全員で合意できれば、結果を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員で署名・捺印します。 遺産分割協議書は、不動産の相続登記や、金融機関での名義変更など、具体的な手続を進める上で必要です。遺産分割調停−遺産分割協議がまとまらない場合−
遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。 調停手続きは、裁判官1人と、男女1人ずつの調停委員、計3人が担当します。調停委員は社会の各分野の専門家など、知見や経験の豊富な人物から選ばれます。 裁判官や調停委員は、相続人の間に立ってそれぞれの言い分を聞いたり、法的に適切な落とし所を探ることで、合意に至る手助けをします。 調停手続きは非公開で、1〜2ヶ月に一度のペース、一回2時間程度です。時間が限られるため、相続人は話したい内容や資料の準備を整えて臨む必要があります。 遺産分割調停は、年間1万5千件近くの申立てがあります。全体の4割強は調停で解決し、1割あまりは当事者で解決するなどして取り下げます(令和5年度)。遺産分割審判
調停手続きを重ねても合意に至らなかったり、話し合いが決裂したりすると、自動的に遺産分割審判に移行します。移行するのは、調停に入ったケースの1割弱です。 遺産分割審判では、相続人それぞれの主張や資料、調停手続きの経過を踏まえて、審判官(裁判官)が遺産の分け方を決定します。 審判の結果に不服がある場合は、高等裁判所に即時抗告ができ、別の裁判官が再度審判します。その決定に憲法違反がある場合に限り、さらに特別抗告をして最高裁で争うことができます。 なお調停手続で、細部を除けば合意できていた場合や、ごく一部の相続人の反対で話し合いが頓挫した場合のように、解決の機運がみられた場合には、改めて審判手続きをすることなく、裁判官が「調停に代わる審判」で分け方を決めます。これがされるのは、調停に入ったケースの3割弱です。遺産分割は弁護士までご相談ください
遺産分割について、相続人調査や協議書の作成だけであれば、他士業への依頼も可能です。しかし遺産分割の内容についてトラブルになった場合でも、ワンストップでサポートが可能な士業は弁護士だけです。途中から依頼をするよりも、初めから相続の事情をよく知っている士業に対応してもらえた方が、よりスムーズに手続きを進めることが可能です。 遺産分割問題が発生したら、まずは弁護士までご相談ください。
- 2024.10.11
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遺産分割とは?4つの分割方法や手続きの流れを弁護士が解説
Contents遺産分割とは
遺産分割とは、被相続人すなわち故人の遺産である個々の財産を、具体的に分ける手続きのことを言います。遺産には金銭的な価値だけでなく思い入れも伴うため、相続人どうしで意見の対立が起きやすく、しばしばトラブルに発展します。遺言書の有無で、遺産分割の進め方は大きく変わります
遺言書がある場合
遺言書がある場合は、原則として、遺言書に記された通りに遺産を分割します。遺言書の内容を実現する手続きとなるため「遺言執行」とも呼ばれます。 なお、遺言書が物理的に存在しようとも、法的に無効とされた場合は、遺言書がないものとして扱われます また、遺言書に扱い方が記されていない財産があれば、その財産については、遺言書がない場合と同様に扱われます。遺言書がない場合
遺言書がなければ、法律上、故人の遺産はいったん相続人全員の共有となります。その上で、遺産分割協議によって最終的な分け方を決めることになります。 すべての相続人が合意に至れば、相続人全員で署名・捺印した遺産分割協議書を作成します。相続登記など具体的な手続きを進めるには、この遺産分割協議書が必要です。 相続人どうしで合意できないときは、裁判官や調停委員を交えた遺産分割調停に進みます。調停も成立しないときは、裁判官が遺産分割審判で分け方を決めます。前提となる事情が争われる場合
遺産分割は「誰に」「何を」「どのように分けるか」の手続きです。誰が相続人で、何が相続財産であるかは、遺産分割協議を進める上での大前提であり、最初に確認する必要があります。 また、遺言書の有無で、手続きは大きく変わります。そのため、遺言書が存在するとしても、それが本物かどうか、法的に有効かどうかで相続人の意見が分かれることがあります。 こうした前提事情に争いがあると、遺産分割協議を進めるのは難しくなります。話し合いで収まらない場合、先に訴訟でこれらの事情に決着をつける必要が生じることもあります。全体像の把握が大事
遺産分割は、既に揉めている場合だけでなく、揉める可能性がある場合も、解決までの全体像を見越した上で対処する必要があります。4種類の遺産分割とそれぞれの特徴
遺産分割には、下記の4種類の方法があります。 現物分割 共有(共有分割) 代償分割 換価分割 それぞれの分割方法について、メリット・デメリットをご説明します。現物分割
相続人の間で、遺産である現金や土地などの物を、物理的に分ける方法です。例えば、一つの土地を二つに割ってそれぞれを兄弟で引き継ぐ場合や、複数ある土地のうちAを兄が、Bを弟が引き継ぐような場合が該当します。メリット
・結論が明快 ・相続人が自由に物を使えるデメリット
・財産の種類によっては、物理的に分けること自体が難しい ・遺産の全体像からみて、公平に分けるのが難しい場合がある ・土地や株式など、細分化すると価値や意義が薄れるものがある共有にする
共有分割とも呼ばれます。遺産である物を、相続人の共有名義にする方法です。例えば、遺産である土地を、2人の相続人が2分の1ずつの持ち分で共有するような場合が、これにあたります。メリット
・物理的に分けにくい財産に対応できる ・共有者がみな物に関わることができ、思い入れを捨てずに済むデメリット
・共有状態では物の活用が難しく、トラブルの種になりやすい(取り扱いにつき、多くの場面で他の共有者の同意が必要) ・持ち分の処分は自由なため、好ましからぬ者が手に入れて共有者に加わるおそれがある ・相続人が亡くなると、その持ち分もまた相続されるため、共有関係がさらに複雑になる代償分割
一部の相続人が遺産を得る代わりに、他の相続人に金銭を支払うやり方です。例えば、兄弟の一人がすべての不動産を引き継ぎ、残りの兄弟に対して一人頭の価額相当分を支払うような場合がこれにあたります。メリット
・物理的に分けにくい財産にも対応できる ・土地など、財産の一体性を守ることができる ・住宅や事業用の資産を、実際に使う者が引き継ぐことができるデメリット
・引き継ぐ者は、支払いのためにまとまった金銭が必要換価分割
遺産である物を売り払い、そのお金を相続人の間で分ける方法です。メリット
・物理的に分けにくい財産にも対応できる ・相続人間の公平さを保ちやすいデメリット
・思い入れのある財産が家族の手から離れる ・反対する相続人がいると競売で売ることになるため、値段が下がりやすく、全員の取り分が減るおそれがある遺産分割でよくあるトラブル
一部の相続人が遺産分割協議に参加しない
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要なため、一人でも欠けると進みません。ときには、感情面から参加を拒む相続人もいます。 どうしても参加しない相続人がいる場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停にも参加しないときは、遺産分割審判で決着することになります。 一部の相続人が所在不明、音信不通のときは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を求める必要があります。不在者財産管理人は、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加します。不動産の分割方法をめぐる意見の対立
経済的価値の大きい不動産は、相続人間で意見が分かれがちです。 実家の土地や建物は、生活の場であり、家族の記憶とも結びつくため、分割方法をめぐって感情的な対立が生じがちです。 特に田畑や工場、事務所などの生業と結びついた不動産は、慎重な対応が必要です。事業を継ぐ者にまとめたいという事情がある一方、経済的な偏りの原因にもなり、相続人の間で公平を図るのが難しいためです。特別受益や寄与分についての意見の対立
特別受益や寄与分も、相続人の間の公平に関わるため、対立が起きやすいポイントです。・特別受益
相続人が、被相続人が亡くなる前の一定期間内に、被相続人から経済的利益を受けていた場合に問題となります。一部の相続人が財産を先取りした形になるため、その分を遺産分割に加味することで相続人間の公平を図る法律上の処理です。 受け取れる財産を左右するだけでなく、一部の相続人が生前から優遇されていた等の感情が伴うことから、対立が生じがちです。 子どもがマイホームを買う際に、親が土地を譲ったり、資金援助をしたりした場合などが、しばしば該当します。・寄与分
寄与分とは、相続人のうち、家業を支える、介護に尽力するなどして、被相続人の財産の維持または増加に寄与した者がいる場合、その分を遺産分割で考慮することで相続人間の公平を図る法律上の処理です。 なお、親族ではあるものの相続人でない者が、特別寄与料を求める場合があります。義父の介護に尽力した嫁のように、法律上は相続人とされない者の貢献に報いる制度です。 個人の働きについての経済的評価を、相続人間の協議で決めることになるため、感情面からも対立が生じがちです。遺産分割についてお悩みの方は弁護士にご相談ください
遺産分割には慎重に対応を
これまで見てきたように、遺産分割には複雑な手続きが伴います。故人の去った悲しみや、葬儀や法事の慌ただしさの中で、これらを次々とこなすのは容易ではありません。トラブルや、思わぬ負担が避けるためにも、慎重な対応が必要です。弁護士なら、一貫したサポートが可能
弁護士なら、相続人・相続財産の調査という「入口」から、遺産分割協議書の作成という「出口」まで、一貫して相続人をサポートできます。 遺産分割調停や遺産分割審判、または訴訟に至ったとき、相続人の代理人として対応できるのは弁護士だけです。相続人・相続財産調査
相続人や相続財産の調査には手間と時間がかかります。弁護士が本人に代わり、戸籍謄本等の資料を集め、相続人や相続財産を精査します。相続放棄や遺言の検認の申立
相続人の代理人として、遺言の検認や相続放棄を申立てることができるのは弁護士だけです。 特に相続放棄の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内であり、短期間で難しい判断を迫られます。相続人や相続財産の調査結果を踏まえて、専門知識でサポートします。遺産分割協議
相続人どうしでは角が立ちやすく、感情のもつれがちな遺産分割協議も、弁護士が間に立つことで、円滑に進みやすくなります。訴訟・調停・審判への対応
もし協議が決裂して調停や審判に至った場合、代理人を務められるのは弁護士だけです。 また、遺言書の効力や、相続人・相続財産の範囲が訴訟で争われた際も、代理人を務められるのは弁護士だけです。 「入口」から「出口」まで、一貫して弁護士が対応することで、手続きをスムーズに進めることができます。紛争解決だけでなく、防止もサポート
遺産分割では、弁護士に依頼することで、手続きの労力を軽減することができます。争いが起きたときの解決だけでなく、あらかじめ争いを防ぐためのお手伝いも可能です。遺産分割についてお悩みの方は弁護士にご相談ください。
- 2024.07.10
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遺産分割問題解決の流れ
相続が発生して遺産分割を行う場合、大きく分けると二通りの流れがあります。 【遺言がある場合】 原則として、遺言に沿って相続手続を行います。 【遺言がない場合】 相続人間で、遺産分割協書を作成の上、相続手続を行います。 それぞれの場合について、遺産分割の流れを解説いたします。Contents(1)遺言がある場合
被相続人の遺言がある場合は、原則として遺言に沿って相続手続を行います。しかし、遺言の形式に不備があったり、本人が書いたものかどうか確認できない場合などには、遺言の効力が認められないことがあります。 遺言がある場合で、その形式に不備があったり、内容に納得がいかない場合には、専門家である弁護士にご相談ください。(2)遺言がない場合
被相続人の遺言がない場合には、法律によって定められた相続人(法定相続人)全員により、遺産分割協議書を作成することになります。 遺産分割協議書がなければ、原則として相続手続を行うことができません。 仮に遺産分割協議がまとまらず、遺産分割協議書を作成できなかった場合の遺産分割の流れは次のようになります。
- 遺産分割協議→遺産分割調停→遺産分割審判
POINT 相続人及び相続財産調査
遺産分割協議にあたっては、相続人(法定相続人)と相続財産の確定が必要です。 具体的には、相続人の戸籍謄本を収集したり、相続財産の目録を作成します。 遺産分割協議が終了した後に新たな相続人が見つかった場合などは、従前の遺産分割協議は無効になってしまいますので注意が必要です。POINT 遺産分割協議
調査によって相続人と相続財産が確定したら、遺産分割協議を行います。 協議がまとまった場合は、その内容にしたがって遺産分割協議書を作成し、これに基づいて相続手続を行います。POINT 遺産分割調停
遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。 調停とは、簡単に言うと、調停委員を仲介者として協議を行う裁判所における手続です。POINT 遺産分割に関する訴訟
遺産分割の前提となる相続人や、相続財産の範囲、遺言の有効性などに関して争いがある場合は、調停などで話し合いを重ねても平行線を辿ってしまうことが多く、そのような場合には、遺産分割に関する訴訟を提起する必要があります。 遺産分割を行う場合、既に揉めている場合や揉める可能性がある場合は、解決までの全体像を見越した上で適切な解決方法を考える必要があります。POINT 遺産分割審判
調停が不調(不成立)になった場合、審判の手続に移行します。審判では裁判官が双方の主張及び証拠に基づき、一定の判断を下します。 審判に不服がある場合は、原則として告知を受けてから2週間以内に抗告する必要があります。遺産分割に関するお困りごとは、弁護士にご相談ください
話し合いで解決するほうが有利になるのか、調停申立てもしくは訴訟提起のほうがよいのか、あなたの状況によってケースバイケースです。 弁護士にご相談いただければ、全体像を踏まえて適切な解決方法をアドバイスさせていただきます。 当事務所では、初回相談は30分無料でお受けしております。お気軽にご相談ください。